不妊症とは
今回の記事では、現在の生殖医療での不妊症の定義と不妊原因の頻度についてまとめています。
不妊症の定義
日本産科婦人科学会では以下のように定義しています。
「 生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、
避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、
妊娠の成立をみない場合を不妊という。
その一定期間については1年というのが一般的である。
なお、妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わない。」
不妊症の頻度としては、子宝を望むご夫婦の5.5組に1組が不妊症に悩んでいると言われています。
不妊症の原因
不妊原因の頻度については、様々な報告がされており、文献により多少の差はありますが、
それらのデータの一例を基にグラフ化したものが次になります。
①卵管因子
女性側の不妊原因で一番頻度が高く、不妊原因の30%前後と言われるのが卵管因子です。
ⓐ物理的に通過性があるかどうか
ⓑ卵子のピックアップ(排卵後の卵子を卵管采がキャッチできるか)や受精卵の輸送ができるかという機能性があるかどうか
このⓐⓑがとても大切です。
また、自然妊娠の場合、卵管膨大部が精子と卵子の出会い(受精)の場となります。
左右の卵管が完全に詰まっていると、自然妊娠はできないことになります。
卵管が詰まる原因としては、クラミジア感染、子宮内膜症、手術などによる骨盤内癒着などが挙げられます。
②排卵因子
女性の不妊原因のうち約10%を占めるのが排卵因子です。
視床下部ー下垂体ー卵巣系の機能異常による排卵障害です。
例として
視床下部・下垂体性の排卵障害
卵巣性排卵障害 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) 乳汁漏出症(高プロラクチン血症) |
体重の急激な減少やストレスなどが原因となることも多いと言われています。
③子宮因子(頸管因子を含む)
胚が着床し発育する場所である子宮内膜、それを取り巻く子宮に起因する不妊の総称。
不妊原因の約10%を占めると言われています。
子宮の形態異常
子宮筋腫 子宮内膜ポリープなどの腫瘍 粘膜下筋腫 子宮腔内癒着症 子宮内膜の器質的・機能的異常 |
など、様々な病態が含まれ、
胚の着床障害、卵管に対する圧迫、子宮の異常収縮・血流障害が要因となると言われています。
また頸管因子では、頸管粘液が分泌しにくくなっていたり、器質的な(物理的な)異常によって、精子が子宮腔内に侵入できない状態になっている場合があります。
④男性因子
上記グラフでは35%と記載していますが、別の調査結果では、
明らかな男性因子が約1/4、男女双方の原因が約1/4、合わせると約1/2が男性側にも不妊の原因があると言われています。
男性不妊症は大きく分けて3つに分類されます。
造精機能障害(83%)
正常な良好運動精子数の減少により、卵管内の卵子にたどり着けない、
または、卵管内で受精できない状態。
(乏精子症、精子無力症、精子奇形症など)
精路障害(14%)
精子の通り道である精路の欠損・閉塞などにより、精子が尿道まで到達できない状態。
性機能障害(3%)
勃起不全(ED)と性交障害がある。
性交障害の原因はストレス・疲労・飲酒・加齢であるとされています。
⑤原因不明不妊
不妊症の原因がないのではなく、検査不可能な不妊原因があるか、偶発的に妊娠できていないことが考えられます。
精査ができない不妊原因としては
卵管疎通性のある卵管機能障害
受精障害 器質的疾患のない着床障害 |
などが考えられています。
今後の医療・検査方法の発展によって今より原因がわかるようになるかもしれません。
今回は挙げていませんが、免疫因子、子宮内膜症因子もあります。
それぞれ書き始めると長くなりそうなので、
この記事では少しだけ触れ、改めて述べることにします。
⑥免疫因子
不妊症カップルの10~20%にみられる原因不明不妊に、免疫因子が絡むものが多いと考えられています。
⑦子宮内膜症因子
不妊症の25~35%に子宮内膜症が合併し、子宮内膜症の30~50%に不妊が認められると言われています。
免疫因子も子宮内膜症因子も不妊症に関わることは多いです。
今回の記事では、現在の生殖医療での不妊症の定義と不妊原因の頻度についてまとめました。
不妊原因は書き始めると、それぞれがかなりのボリュームになりそうなので、
各論は改めて記事にしたいと思います。
記事を書いている人 平田泰之
富山県黒部市で不妊症をはじめ、生理痛・妊娠・出産後のケアなど女性のライフサイクルに関わる身体の悩みを40年間専門にしているひらた資生堂薬局の二代目。ひらた鍼灸治療院院長。
薬剤師・鍼灸師・コウノトリ鍼灸師・ONP認定栄養カウンセラー・睡眠健康指導士上級・婦人科セラピー協会会員・日本生殖医学会会員・日本不妊カウンセリング学会会員
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