子宮内膜症はどう影響する?

子宮内膜症の特徴

子宮内膜症は、子宮腔以外の場所で子宮内膜様組織が発生し、疼痛・不妊などを引き起こすエストロゲン依存性疾患です。

・生殖年齢女性のおよそ10%に発生(20~40歳代の女性に好発)

・子宮内膜症患者のおよそ半数は不妊症を合併

・不妊患者の25~50%に子宮内膜症が診断される

月経を重ねるごとに生理痛・慢性骨盤痛・性交痛・排便痛などが増強する傾向があります。

子宮内膜症があると、子宮内膜症がない女性に比べ、妊孕能(妊娠する力)は低下すると言われています。

原因

子宮内膜移植説や体腔上皮化生説などありますが、医学的にはまだ解明されていません。

【子宮内膜移植説】

本来生理の時に排出されるべき子宮内膜が剥離したものが、月経血と一緒に卵管から腹腔内に逆流し、腹腔で増殖するという説

【体腔上皮化生説】

腹膜や卵巣などの中皮細胞が何らかの刺激で子宮内膜様組織になってしまうという説

 

子宮内膜症を合併した不妊で報告されていること

  1. 骨盤内への影響
  2. 免疫異常
  3. 内分泌・排卵への影響
  4. 着床への影響
  5. 卵子・胚の質の低下
  6. 卵管の輸送能への影響

1.骨盤内への影響

腹腔内での癒着の原因となり、骨盤内臓器の位置異常を引き起こすことがあります。

内膜症患者では、腹水の量が増加しているとの報告があります。

また、卵管の通過性・可動性を阻害したり、排卵障害を起こすことがあります。

2.免疫異常

子宮内膜症と免疫異常の関連が指摘されています。

全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患との合併率が高かったり、

遺伝による家族発生例が報告されていることなどから、自己免疫疾患と見るべきとの意見もあります。

3.内分泌・排卵への影響

内膜症患者では、

・LHサージ時の血中エストロゲン値が低く

・卵胞径も小さく

・黄体期のプロゲステロン値も低い

・卵胞顆粒膜細胞のステロイド合成能の低下

こういった報告があります。

内膜症の1種である、チョコレート嚢胞は排卵障害もその特徴として挙げられます。

 

4.着床への影響

内膜症が子宮内膜に影響して、着床に影響することが提唱されています。

腹水中に増加しているサイトカインが関係していることが示されています。

 

5.卵子・胚の質の低下

子宮内膜症患者の不妊では、卵胞・卵・胚の質の低下が関係していると考えられています。

・卵胞液中のプロゲステロン・サイトカイン濃度が変化している

・子宮内膜症患者の胚は、卵管性不妊患者の胚に比べ、発育速度が遅い

との報告もあります。

最近の動物実験では、子宮内膜症があると、

・成熟卵と胚の数が減少した

・卵子の紡錘体に異常がみられる

との結果が出ています。

6.卵管の輸送能への影響

子宮内膜症があると、卵管の輸送能力が低下すると言われています。

子宮内膜症患者の腹水中で増加しているIL-6が、

卵管上皮の繊毛運動を障害する(卵管を輸送する動きを低下させる)とされています。

 

ART(生殖補助医療)での成績

子宮内膜症患者では、妊娠率は低下し、

重症例では、軽症例より妊娠率が低下する傾向があります。

 

子宮内膜症患者の妊孕能低下は、

子宮内膜の受容能(着床に関係する)より、

卵の質の低下による影響の方が大きいと考えられています。

 

まとめ

この記事では、子宮内膜症がどのように影響するかをまとめました。

一口に子宮内膜症と言っても、

軽症例か重症例か、場所はどこか、

癒着があるかどうか、など

人によって異なります。

病院では内膜症と診断されていないけれど、

生理痛が酷いケースもたくさんあります。

内膜症が疑われる場合は、一度病院での検査を勧めています。

(手術など、病院でしかできない処置が必要な場合は、治療を受けるべきです。

ただ、時間が経つと再発するケースもあります。

なぜ内膜症になるのか、根本原因と考えられるものは何か。

その原因が解消されていないのであれば、再発するものと考えられます。)

子宮内膜症があるから絶対妊娠できないかというと、そういうわけではありません。

当店に子宝漢方相談・子宝鍼灸に来られる女性の多くは、内膜症ないし、生理痛があります。

ですが、「妊娠しやすい身体づくり」に取り組む中で、ほとんどの人が生理痛が軽減していますし、妊娠される方も多いです。

 

今回は長くなったので、

子宮内膜症がある方、あると疑われる方が取り組むべきこと、

注意すべきことを改めて記事にしようと考えています。

記事を書いている人 平田泰之

富山県黒部市で不妊症をはじめ、生理痛・妊娠・出産後のケアなど女性のライフサイクルに関わる身体の悩みを40年間専門にしているひらた資生堂薬局の二代目。ひらた鍼灸治療院院長。

薬剤師・鍼灸師・コウノトリ鍼灸師・ONP認定栄養カウンセラー・睡眠健康指導士上級・婦人科セラピー協会会員・日本生殖医学会会員・日本不妊カウンセリング学会会員

 

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